家庭科 衣生活分野・住生活分野 e-Leaning

生活分野

騒音問題「住まいと地域の音」

対象学生以上 


授業の趣旨

>>授業の概要

 音には快適な音や騒音となる不快な生活音がある。川のせせらぎや小鳥のさえずりは心地よさを与えたり、風鈴の音は暑い夏に清涼感を与えたりする。一方、隣家からの生活騒音や航空機騒音は不快感をもたらす。
 本題材では、そうした身の回りの様々な音について取り上げることで、音も快適な生活を構成する要素であることを子どもたちに伝えたい。また、生活を豊かにする季節の音を大切にしてきた日本の生活文化についても触れ、騒音については家族や地域の人々との関わりを考えて、生活音の発生に配慮する必要があることに気付かせたい。加えて、地域の音風景についても取り上げ、子どもたちに自分の住む地域の音を探す活動を取り入れたいと考える。それにより、自分の住む地域において新たな発見したり地域を見つめ直したりして、地域と共に生きる姿勢を育みたい。
 これまで快適な空間をつくる要素の一つである「音」については、中学校家庭科で主に扱われてきた。しかし、平成29年度告示の小学校学習指導要領家庭科編では小学校で学ぶ内容として位置づけられるようになった。この事から、小学生の子どもたちに音と快適さの関係に気付かせたり、騒音について意識させたりすることが重要となっていると考えた。また同様に、小学校学習指導要領では、「地域」を含む記述が多く見られ、自分の生活は家庭内で完結するのではなく地域とのつながりの中で形成されていくことを意識させ、地域との関わり方を考えさせることが重視されている。したがって本題材は、地域の音探しを通じて子どもたちが地域を知り、地域との関わり方についても考えるきっかけとしたい。

授業の目標

・音には快適な音や騒音となる不快な生活音があることを理解する。
・地域の音を見つけることで、地域への興味関心を高める。
・音の感じ方には個人差があることに気付き、家族と共に快適な生活を送るための工夫について考える。

授業の計画(全2時間)

・身の周りの音を感じよう…1時間
・音と地域と家族…1時間

作成する教材

本題材で使用する教材は二つある。
(1)快適な音、不快な音、地域の音に関する動画
(2)自分たちで集めた地域の音が再生できるパワーポイント「音マップ」

(1)快適な音、不快な音、地域の音に関する動画について
 動画は以下のようなストーリーで構成される。動画の前半と後半の間にはグループワークを挿入する。

前 半

季節は夏。主人公はAさん。Aさんはマンションに住んでいる。ある日の昼間、Aさんは自分の部屋で過ごしている。暑いのでエアコンをつけていたが、エアコンの冷風にずっと当たっていると体が疲れたのでAさんはエアコンを止めて窓を開けることにした。風に揺られて鳴る風鈴の音は不思議と暑さを和らげた。突然、天井からドタバタと足音が鳴り響いてきた。どうやら上の階に住む小学生が騒いでいるようだ。すると今度はAさんの母親が掃除機をかけ始めたようで、掃除機の音が家中に響き渡る。不快感に耐えられなくなったAさんは家を出て散歩することにした。


《ワーク①》Aさんが聞いた音をみんなどう感じたかな?ワークシートに書こう。

《ワーク②》みんなの家の中ではどんな音が聞こえるかな?その音をどう感じるかな?グループで話してみよう。
《ワーク③》学校にはどんな音があるかな?音を測りに行ってみよう

後 半

Aさんは川沿いに向かった。川のせせらぎ、小鳥のさえずり、木々の揺れる音…。川沿いはいろいろな音がする。 Aさんは自分の住む地域にはこんなにも音で溢れていたのかということに気付く。

《ワーク④》みんなの地域にはどんな音があるかな?自分の地域の音風景について話し合おう。

 

(2)自分たちで集めた地域の音が再生できるパワーポイント「音マップ」について
 本題材の1時間目が終わった後の宿題として児童に自分の住む地域の音を録音してきてもらう。児童が録音してきた音を共有するためのパワーポイントを作成する。
 児童はおそらく放課後に音を取りに行く。昼・夜では同じ場所でも違う音が聞こえるため、教師は児童が録音した時間帯とは別の時間帯に、児童が録音した場所へ数か所行き、音をとる。
 具体的には次のようなパワーポイントを作成したい。パワーポイントを開くと自分の住む地域の地図が出てくる。地図上にはいくつか再生ボタンがあり、地図上のボタンを押すとそこで聞こえる音が再生できる。

授業構想(全2時間)


Ⅰ時間目
時間 (分) 学習活動
【導入】
(10分)
  • 動画前半を見せる。音には快適な音と不快な音があることに気付かせる。
    ワーク①Aさんが聞いた音をみんなどう感じたかな?ワークシートに書こう。
    ワーク②みんなの家の中ではどんな音が聞こえるかな?その音をどう感じるかな?グループで話してみよう。
  • グループで出た意見を全体共有する。
    ⇒家の中の音には快適な音や不快な音があることに気付かせる。
【展開】
(30分)
  • ワーク③学校にはどんな音があるかな?音を測りに行ってみよう
    図書室や校庭など学校内の音を測り行く。
    ⇒学校内にも様々な音があり、音も環境の快適さを作り出す要素であることに気付かせる。
  • 動画後半を見せる。
  • ワーク④みんなの地域にはどんな音があるかな?自分の地域の音風景について話し合おう。  
    どこでどんな音がするか思い出して、学校周辺の地図に書き込んでいく。
【まとめ】
(5分)
  • ワーク④の全体共有をする。
  • 「実際に地域の音を見つけに行こう」と締めくくる。
  • 宿題の指示を出す。
【宿題】
  • 地域の音を録音する。班に一台タブレットを貸出し、班で2箇所の音(不快な音と快適な音)を録音してくる。班4人程度で、家が近い者同士を同じ班にする。
    録音した場所を地図に印し、録音した時間もメモしておく。
  • 家族と時間帯別に、家の中の苦手な音(掃除機や洗濯機などの生活音)について話し合う。その対策についても話し合う。
    例)昼間、掃除機の音がうるさくて勉強に集中できない。⇒図書館で勉強する。または掃除機をかける時間帯を変える。
    夜、食器洗いの音がうるさくてテレビの音が聞こえない。⇒イヤホンをしてテレビを見る。
    ※2時間目の前までに子どもたちの集めてきた音を回収する。教師は児童が録音した場所に、児童が録音した時間とは別の時間帯に行って音を録る。「音マップ」を作成しておく。


2時間目
時間 (分) 学習活動
【導入】
(5分)
  • 前回の振り返り
【展開】
(30分)
  • 「音マップ」で自分たちの集めてきた音を聴く。音を聴いて、心地よいと感じた音(好きな音)を選ぶ。
    ⇒自分たちの地域には快適さを感じさせる音が存在することに気付かせる。 「音マップ」を用いて、同じ場所の異なる時間帯の音を比較する。
     ⇒同じ場所でも時間帯が変わると、音風景も変わることに気付かせる。
  • 家族で時間帯別の苦手な音について話し合った結果をグループで共有する。それぞれの家庭でどんな音が苦手という意見が出たのか、その対策についてどんな案が出たかを発表する。
     ⇒家族内でも苦手と感じる音が違うことから音の感じ方には個人差があることに気付かせる。時間帯によって音の感じ方が変わることに気付かせる。
  • 対策が思い浮かばなかったことについては、グループで対策を共に考える。対策を考えるためのヒントとして、教師は防音マットや防音カーテンなどの情報が記載された資料を配布する。
  • 数班発表して全体共有する。
【まとめ】
(10分)
  • 本題材の振り返りを行う。
    本題材で学んだことを快適な生活のためにどのように活かしていきたいか、今後地域とどのように関わっていきたいか、の2点についてワークシートに記述する。
    数人に発表してもらい、全体共有する。
【宿題】
  • 「音マップ」を見て、行ったことが無い場所へ行き、そこで音を感じてみる。
    ⇒小学生は行動範囲が狭いため、自分の地域でも行ったことの無い場所は多く存在する。そのため、「音マップ」を見て普段行かない場所へ行くことは、地域の新たな魅力に出会うきっかけとなる。


教材データのダウンロード

授業の概要(PDFデータ)
(1)快適な音、不快な音、地域の音に関する動画(PowerPontデータ)
(2)自分たちで集めた地域の音が再生できるパワーポイント「音マップ」

教材作成

横浜国立大学 佐桑研究室